7年前に思考の奥底に追いやった未来の啓示が、最近よく脳裏によみがえる。

これはプラント建設の実働時間(労力)を3分の1に抑え、かつ遂行スピード(プロジェクトスケジュール感)を2倍に高めるという意味合いを記した指標だ。2018年に日揮が策定したITグランドプラン2030に発する。当時は「どうやって実現する?」に思考が偏り過ぎて、無理ゲーだと思っていた。しかし、昨今の進化と不確実性に満ちたビジネス環境に身を置いていると、あながち不可能でもない気がしてきている。

なんだこの違和感は…

その兆しは、これまで“見えていなかったもの”が見え始めているからだ。
既存のデータを整備したり、IT利活用のレベルを上げるだけではこの啓示に到底届かない。
むしろ、これまでデータとして存在すらしていなかった情報をデータ化することで初めて見えてくる世界がある。

その私的指標として「デジタル被覆率」という考え方を密かに導入している。

現実空間をデジタル化したオブジェクトにグローバル座標が付与され、仮想空間に配置する。無機質な点や線を起点に、背景にある意味を付与することでどれだけ市場価値に転嫁できたかの指標である。例えるなら、携帯通信で使われる5Gサービスのカバー率のような指数だ。

実は「意味づけ」が構造化されることで、データが我々に教えてくれることは無数にあるということに気付いた。どうやらこのあたりにDXの突破口がありそうだ。

人の役割とは…

生成AIとの対話は、やがて人類の物理的な会話量を超える可能性がある――と、OpenAIのアルトマン氏が語っているように、AIが人の思考プロセスを光を反射するような速さで汲み取るのを誰もが体感している。私自身も骨髄が震える体験をした。

ではこれから先、人の役割は何か。それは「問い」に尽きる。

「プロンプト」という雰囲気のあるカタカナに惑わされてはいけない。
「ブランディング」もそうだが、使い勝手はいい、でも実態が伴いにくい言葉は危うい。私はこうした言葉を“取扱注意カタカナ”に分類している。

ここでいう「問い」とは、本質を捉えて問うことが革命の一丁目一番地だということ。
問いを誤れば、本質から外れた回答や指南に溢れ、世界は混沌とし、路頭に迷う。
しかし、正しい問いを投げかけられる人には必ず勝利の女神が微笑む。

イメージできないものは実現できない

公共インフラのデジタル3D化は、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社やPLATEAU(国交省主導の都市3Dデータ整備プロジェクト)のように、すでに国家規模の取り組みとして進んでいる。自動運転の未来をイメージできることが、前進するためのエンジンになっているのだろう。

公道と違ってプラント構内は閉ざされた世界だ。構内は許可された者しか立ち入れず、それが従事する者の誇りでもあり、現場を知ってなんぼの三現主義が色濃い。だからこそ、セキュリティが担保されたサイバースペース上にデジタルツインを構築することに意味があり、許可された者がアクセスし「実空間に刻まれた暗黙知をどう構造化するか」を問い続け、研ぎ澄ましていく。

私はそこに、日本のものづくり産業が再び世界の中心に躍り出る勝ち筋があると思っている。推しの言葉を裏を返せば、自分がイメージできることは必ず実現できる。

正しい問いを持ち、志を同じくする精鋭が集う当社主催のイベント、アニバーサリーカンファレンスを心待ちにしている。
数字の外にある価値を信じる勇者たちと共に、未来の景色を共有するのだ。

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