画像生成AI界隈がえらいことになっている。

本来、そこに備わっていなかった画風や雰囲気が、プロンプト一言で生成されるその完成度に世界中が驚嘆している。以前なら、構図・照明・色彩・筆のタッチまで、プロのデザイナーが数日かけて描いたであろうものが、ノーコードで、Photoshopどころか、ブラシすら握らなくてよくなってしまった。

ここまで来ると、もはや「画像を生成する」というより「画像を呼び出す」と言った感覚に近い。文脈の向こう側にいる誰かの記憶にアクセスして、サッと借りてきたような。あまりにも手軽過ぎるので、本家の著作権を侵害しかねない問題意識が薄れる危険性を伴う。

一方で、デザインやビジュアル制作を本業としてきた人にとっては、この“ハイスペック無銭コンテンツ供給装置”は脅威以外のなにものでもないのではなかろうか。コスト、スピード、柔軟性。どれをとっても従来の手法では勝てない局面が増えてきた。

静止画だけじゃなく、動画生成の波も、思っていたより早く、しかもでかい。
生成AIが出力する1分の映像に、これまで20人が半年かけていた世界観と同等かそれ以上を描けたりする。CGの作り手も、作り方も、概念そのものがひっくり返る日も近い。

…と、ここまでは「すごいですね〜こわいですね~」という話。
私の関心はこの先。つまり、三次元空間への拡張。

昨年あたりから「ガウシアンスプラッティング」なる技術が盛り上がりを見せ、フォトリアルな空間構成がAIだけで成立する兆しが出てきた。でも冷静にみれば、まだ“掌サイズ”の話だと思っている。たとえば六畳一間くらいなら、スマホ片手にスキャン&生成でもそれなりに使える。しかし、我々が関わる数百万㎡級のプラント領域となると話は違う。解析労力も莫大だし、ハルシネーション(幻覚)で配管1本の位置がズレようものなら、現場のベテランには「不信感」のレッテルを貼られる。

現場×生成AIには、いまだ“信用”という大切な砦がある。

その点で言うと、携帯端末にこっそりLiDARを仕込み続けるAppleは、何を見ているのか気になる。家具配置アプリのためにセンサーを積むような会社じゃない。人間生活とデバイスの接地面に、物理空間を織り込もうとする意志が見え隠れする。

一方で、カメラ以外のセンサーを一切排除して自動運転を志すイーロン・マスクもまた、極端で面白い。
「人間が目で運転できるなら、機械もそれで十分だろ」という彼のロジックは正しいようで、どこか挑発的だ。

センサー信仰を捨て、機械に“見え方”を委ねたその先に、果たしてどんな実空間が見えているのか。

画像生成が高速で繰り出す世界に、我々は確実に飲み込まれつつある。
それが胃袋なのか、宇宙船の入り口なのかは、もう少し先にならないと分からない。ような気もするが、ブラウンリバースとしては、胃袋だったら成長の糧とするし、宇宙船だったら2025年宇宙の旅の脚本家でありたい。

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