私の父は化学工場に勤務する傍ら、書道をゼロから始め、今では埼玉県代表20人に選出される書家である。週末には自宅が書道教室になることもあり、物心ついたころから書が身近にあり、現在でも父を師と仰ぎながら創作活動を続けている。

書道は、紙の中に文字数、余白、墨の濃淡のバランスをいかに心地よく配置するかで表現したいことを具現化するシンプルゆえのそこはかとなく奥深いアートである。中国四千年の歴史の中で生まれた名筆や漢詩が未だに模写され古典から基礎を学ぶ姿勢が千年以上変わっていないことに驚愕する。翻って、構造物を模写する時、そこには、紙のような物理的な制約はなく、写真、点群、メッシュモデル、スケッチ、模型作り含めて表現方法の選択肢が多様に生み出され続けているのと同時に、ベストな表現方法を今なお模索されているのが現在地点であると言える。

書道の「所作」と物事の表現を紐づけて考えるのが私にとっては日常であり、当たり前の思考の枠組みとなっている。だからこそ、プラントや工場などの構造物のデジタルツインにおいて、図面ではない表現方法が台頭する時代の到来を確信している。昭和100年となる2025年、昭和の人間には変わらないものと変わりゆくもののコントラストが一層際立って見え、表現の未来を問わずにはいられない、物申さずにはいられないのである。

構造物は少なくともデジタル空間で表現されることが「スタンダード」となって、図面や仕様書等の設計図書で表現することが「古典」となっていくことが、デジタルツインという概念の中では暗黙の了解、当たり前になっていくであろう。そして、見る者にとって理解しやすく、操作する者にとってストレスなく、創る者にとって示唆に富んだものであればよい、というあるべき姿も見えている。それを社会実装するのがブラウンリバースのミッションである、ということに帰着する。

これが書を基とした私の思考プロセスであり、一年の計としてみた。

ちなみに、東京都美術館で開催される太玄会書展に「金丸崋山」という雅号で自作を出品している。お近くにいる際は立ち寄っていただけると嬉しい(入場無料)。デジタルツインの片りんなど微塵も感じられないだろうが、創作者は同じ人間である。その事実を知っているだけでも、他の観覧者とは違う発見があるかもしれない。

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